撤退する勇気

トリニティーコンサルティングの田口です。
本日のテーマは、事業撤退について触れたいと思います。

単一事業から成長し複数の事業展開を進めていくと、すべてがきれいに花開くわけではありません。事業計画が成立したうえで事業を開始しているはずですから、一旦は軌道には乗るはずです。または、それさえも叶わなかった場合、撤退ラインを「予め」決めておき、そこに到達できなかった場合は潔く撤退することを強くお勧めします。なぜなら、人は危機になればなるほど自らを客観的に見ることができなくなり判断力が鈍ってしまうから。目隠しされた競走馬と同じで(目隠しを「ブリンカー」と言うそうです)、「ゴール」しか視界に入れられていないとそれに向かって走ってしまいます。しかし、その目隠しの死角の側では、山火事が起きているのかもしれませんし、腹を空かせたライオンがひたひたと近づいてきているのかもしれません。

ましてや自分が思いを持って立ち上げた事業ですから、誰も撤退の「て」の字も口に出したくもないでしょう。しかし、損益があわない事業をズルズルと継続することで、当然ですがキャッシュが毎月のように目減りしていきます。赤字から事業再生までの間に必要となる十分な資金を準備出来たのであれば別ですが、中小零細企業においてそんな十分な資金は無いことが通常です。

撤退を議論するにあたってたちが悪いのは、「本業(十分に)黒字、新事業赤字」のケースです。この場合、場合によっては十分な資金が準備出来てしまったり、他事業からの利益で新事業の赤字が見えなくなってしまっているケースが成り立ってしまいます。

その赤字事業を継続する意味はどこにあるのか?経営理念と照らしわせ、自社でその事業にそのまま取り組み続けることの意義があるのか。仮に意義があるとすれば、その黒字化にあと何ヶ月必要なのか。その間のキャッシュフローが成立し得るのであれば継続もありですが、「いつまでに」「どうなっていなければ」撤退する、ということを決めてからにすべき。

コロナ禍をはじめ、経営における現在の環境変化のスピードは著しくアップしています。
事業計画では成り立つはずのビジネスが、実際にやってみるとそうならないケースも出てくるはずです。

ビジネスの前提条件は常に変わっています。不採算事業を長く持ちすぎることでかえって傷口を広げた、なんていうケースは営業先でも本当によく目にします。弊社トリニティーグループでも、(経営コンサルティングのクライアント様以外で)創業から数多くの事業を直接手掛けてきました。広げた事業数も相当多いですが、撤退した事業も決して少なくはありません。むしろ事業撤退の経営判断について、好意的に捉えています。

一般的に、事業撤退とは事業の立ち上げよりもむしろ「勇気」が必要です。
これからの大変化の時代には、事業撤退も含めてどれだけ柔軟に変化できるのかがポイント。撤退の方法も、何も廃業がすべてではありません。現在はM&Aが一般化してきた影響もあり、部分的な事業売却、一部資産を名目にした譲渡、会社分割なども可能です。一昔前と比較すれば様々な選択肢があります。そして、判断の遅れはキャッシュの枯渇に直結します。いちど勇気を持って「前向きに」不採算事業の撤退シミュレーションをしてみてはいかがでしょうか。